今後の民法改正(令和5年4月1日施行)により、裁判所の決定を得て、行方不明の共有者の不動産持分を含む所有権全体を第三者に譲渡(売却)できるようになりました。
行方不明共有者の不動産持分の取得と類似した制度なので、ここでは相違点について記載します。
Q&A
Q1.持分取得制度との主な違いは何ですか?
A1.持分取得制度は行方不明者の持分を他の共有者が取得するのに対し、この制度では所有権全体(行方不明者の持分もそれ以外の人の持分も全て)を第三者に売却する点が最も大きな違いです。
なお、共有者が第三者として買い受けることはできません。
Q2.持分取得制度と比べてどんなメリットがありますか?
A2.最初から不動産を売却することが目的ならば、行方不明者の持分を取得してから売却するよりも、この制度により一気に売却してしまったほうが手続きが簡単です。
また、持分を別々に売るよりも所有権全体をまとめて売ったほうが高く売れます。持分2分の1の売却価格より、所有権全体の売却価格の2分の1のほうが高くなる、ということです。
Q3.行方不明者の持分のみを売却できますか?
A3.できません。所有権全体である必要があります。
したがって、他に(行方不明ではない)共有者がいる場合は、その人達も売却に同意している必要があります。
Q4.裁判所の決定を得てからいつまでに売却する必要がありますか?
A4.原則として2カ月以内です。
裁判所は、請求者に行方不明者の持分を売却する権限を与えるだけで、売却自体を決定するわけではありません。
したがって、売却の手続きは別途進める必要があります。通常は制度の利用に先立って売却先の決定や契約の締結をするものと思われます。
なお、2カ月を経過すると裁判は効力を失ってしまいます。
Q5.行方不明者分の売却代金はどうすればいいですか?
A5.この制度により売却権限を得た共有者(買主ではないことに注意)が供託所に供託します。
供託金額は、不動産全体の時価相当額を行方不明者の持分に応じて按分した額です。この額は一般的に持分の時価相当額(※)よりも高くなります。(Q2参照。)
※持分取得制度における供託額は、行方不明者の持分の時価相当額なので、ここも相違点です。
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