行方不明・無関心の共有者の同意を得ずに共有物を管理する方法

共有物の管理に関する事項は、原則として共有者の持分の価格の過半数で決定します。

今後の民法改正(令和5年4月1日施行)により、行方不明者または行方不明ではないが共有物に無関心な共有者がいる場合、裁判所の決定を得てその共有者の同意を得ずに共有物の管理に関する事項を決定できるようになりました

この規定は不動産に限らず、共有物全般に適用されるものです。

Q&A

Q1.共有物の「管理」とは何ですか?

A1.共有物の変更を伴わない利用・改良、共有物の管理者の選任・解任等をいいます。また、共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないものを含みます。

Q2.裁判所への申立ての前に、無関心な共有者に催告する必要はありますか?

A2.催告する必要があります

相当期間(2週間程度)を定めて催告し、期間内に賛否を明らかにしない場合にのみ、申し立てることができます。

Q3.行方不明の共有者についてどこまで調査する必要がありますか?

A3.具体的な調査方法まで法律で決まっているわけではないのでケースバイケースですが、必要な調査を尽くし、裁判所に所在等が不明と認められる必要があります。

例えば以下のような調査が考えられます。

  • 住民票上の住所(不動産の場合は登記簿上の住所も)に居住していないかどうかを調査
  • 死亡している場合には戸籍を調査して、判明した相続人の住民票を調査他の共有者に確認

Q4.申立てはどの裁判所に対して行うのですか?

A4.共有物の所在地を管轄する地方裁判所です。

Q5.裁判所への申立ては、行方不明・無関心の共有者以外の全員から行う必要がありますか?

A5.共有者の1人からでも可能です。

ただし、裁判所の決定を得たとしても、行方不明・無関心以外の共有者の持分価格の過半数の同意がなければ、共有物の管理に関する事項の決定はできません

Q6.行方不明や無関心の共有者は、この手続きにより同意したとみなされるのですか?

A6.同意したとみなされるのではなく、除外されます

例えば、ABCが持分3分の1ずつで共有する物について、Cが行方不明(または無関心)の場合、ABとも同意する必要があります。Cは除外して考える(同意とみなすわけではない)ので、ABどちらかが不同意の場合、過半数をクリアしないからです。

Q7.行方不明・無関心の共有者が持分の大半を有している場合でも、この手続きは利用できますか?

A7.利用できます。

Q8.行方不明・無関心の共有者が複数いる場合でも、この手続きは利用できますか?

A8.利用できます。

Q9.裁判所の決定までどれくらい時間がかかりますか?

A9.行方不明者に対しては、異議がある場合に一定の期間内に届け出るよう公告がなされ、無関心な共有者に対しては、一定の期間内に賛否を明らかにするよう通知がされます。(申し立て前に行った催告とは別に、裁判所からも催告がなされるということです。)

これらの期間はいずれも1カ月以上とする必要があり、その期間経過後に裁判所による共有物管理許可決定の裁判がなされることになります。

異議申出期間中に行方不明の共有者から異議が出たり、無関心な共有者が賛否を明らかにした場合は、申し立ては却下されます。

Q10.現状、共有物を使用している共有者がいる場合でも、過半数の同意があればその者の反対を押し切ってもよいのですか?

A10.以下のいずれにも当てはまる場合は、その共有者の承諾を得る必要があります

  • 共有者間の決定に基づいて共有物を使用している(勝手に使用しているわけではない)
  • 管理に関する決定が、その共有者に特別の影響を及ぼす

Q11.この手続きでできる「管理」には賃貸も含まれますか?

A11.以下の期間を超えない賃貸はできます。(これらの期間を超える賃貸をするには共有者全員の同意が必要です。)

  • 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林 … 10年
  • 上記1以外の土地 … 5年
  • 建物 … 3年
  • 動産 … 6箇月

ただし、アパート等の居住用不動産の賃貸は、借地借家法により原則として契約更新を拒絶できないので、最初の契約が上記期間内であったとしても全員の同意を必要とします

Q12.認知症で意思表示ができない共有者を、無関心の共有者として除外することはできますか?

A12.できません。

無関心の共有者に対しては催告することが条件となっていますが、認知症の共有者には催告を受領する能力がないと考えられるからです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました