古い地上権・質権等の抹消手続きが簡略化されます

ずっと昔に登記されて、当事者が行方不明となっている地上権や質権が残っている土地があります。このような土地を売ったり担保に入れたりするには、通常はこれらの登記を抹消する必要があります。

今までもこのようなケースに対応するための手続きはあったのですが、手続きの負担が重く、実際にはあまり利用されていませんでした。

不動産登記法改正(令和5年4月1日施行)により、存続期間が登記されている権利について、その期間が満了している場合の抹消手続きが簡略化されました。

なお、対象は存続期間が登記されている権利(地上権、永小作権、質権、賃借権、採石権、買戻し特約)に限定されており、実際には最も多いと思われる抵当権や根抵当権は対象外となっています。

※なお、抵当権者が法人の場合は別の簡易手続きが用意されています。『古い抵当権等の抹消手続きが簡略化されます』参照。

Q&A

Q1.どのような手続きを経る必要がありますか?

A1.以下の手続きを経て、不動産の所有者単独で登記の抹消手続きが可能となります。

  1. 当事者の所在を調査する
  2. 裁判所に公示催告を申立て、除権決定を得る

上記1の手続きにおいて「現地調査までは不要」とされており、この点で従来よりも手続きの負荷が軽減されています。

また、上記2の手続きについても、申立ての要件として「登記された権利が消滅していること」の証明が必要とされているところ、存続期間が登記されておりその期間が経過している場合はその事実をもって証明したと認定されるケースが多いと考えられることから、事実上、手続きの負荷が軽減されています。(わかりにくい表現で恐縮です…。要は、存続期間が過ぎていれば基本的には権利の消滅を証明したことになるが、個々の事案により事情は様々なので例外もありえますよ、ということです。)

なお、公示催告とは、行方不明の当事者に対し、公告(官報への掲載および裁判所の掲示場への掲示)により権利の届出を催告する手続きです。公告された期限までに権利の届出がない場合、裁判所により除権決定(権利の失効の宣言)がなされます。

Q2.当事者の所在について、具体的にどのような調査をする必要がありますか?(個人の場合)

A2.以下のような調査が想定されています。なお、現実に現地を訪れての調査までは不要とされています。

  • 登記記録上の住所における住民票の登録の有無を調査
  • 登記記録上の住所を本籍地とする戸籍や戸籍の附票の有無を調査
  • 死亡していることが判明した場合にはその相続人の住民票や戸籍等の有無を調査
  • (不在住証明書・不在籍証明書が取得できない場合)登記記録上の住所に宛てた郵便物が不送達となることを確認

Q3.当事者の所在について、具体的にどのような調査をする必要がありますか?(法人の場合)

A3.以下のような調査が想定されています。

<法人の登記簿が閉鎖され、その閉鎖登記簿も保存されていない場合>

→もはやそれ以上は調査等をすることもできないので調査を尽くしたということができます。

<法人の登記事項証明書や閉鎖登記簿の取得が可能な場合>

法人の本店等の住所に法人が存在していないことを確認登記されている法人の代表についてその全員が死亡していること、あるいはその生死・所在が不明であることについて、公的書類(※)により確認

※具体的には以下のような書類が想定されます。

  • 登記上の代表者の住所についての不在住証明書
  • 法人の主たる事務所や本店所在地に宛てた郵便物が不送達であったことを証する書面

なお、代表者が死亡していたり不明である場合であっても、新たな代表者を選定・選任することまでは不要と考えられています。

また、代表者が死亡していてもその相続人を調査する必要はありません。会社の代表者の地位は一身専属的なものであり相続されないからです。

Q4.当事者が見つかった場合は、この手続きは利用できないのですか?

A4.利用できません。

調査の結果、当事者が見つかった場合は、原則通り当事者と共同して登記の抹消手続きを行う必要があります。

Q5.存続期間が登記されていない場合は、この手続きは利用できないのですか?

A5.利用できません。

存続期間は必ずしも登記されているとは限りません。存続期間が登記されていない場合は、残念ながらこの手続きは利用できません。

Q6.買戻し特約の抹消について教えてください。

A6.買戻し特約については、売買契約の日から10年を経過したときは、不動産所有者は単独で登記の抹消手続きができます。

当事者の所在調査も公示催告の手続きも必要ありません。買戻し期間の上限は10年と決まっており更新もできないからです。

なお、単独で抹消登記申請された場合には、買戻し権利者の登記上の住所宛に通知がなされます。

Q7.施行日(令和5年4月1日)前に登記されている権利についても、この手続きは利用できますか?

A7.利用できます。

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