成年後見の申立人になって欲しいと言われたら

自治体などから連絡があり、疎遠な親族の成年後見を開始するために申立人になって欲しいと頼まれることがあります。

自らが成年後見人になることは無理だとしても、誰かしら成年後見人(司法書士などの専門職が選任されることが多いです)を付けるための申立てにはぜひ協力してあげて欲しいのですが、手続きや費用負担についてよく知らずに引き受けてしまうと「こんなはずじゃなかった!」と後悔するおそれがあります。

Q&A

Q1.誰が申立人になれますか?

A1.成年後見開始の申立てができる人は以下の通りです。

  • 本人、配偶者、4親等内の親族
  • 未成年後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者
  • 未成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人、任意後見監督人
  • 検察官(実際に申立てを行う例はほとんどありません)
  • 市区町村長

申立権者は法律で決まっており、誰でもできるわけではありません。本人も申立てができますが、判断能力の低下の度合いによっては不可能です。市区町村長も申立てができますが、まずは親族の意向を調査することが原則となっています。

以上のことから、疎遠な親族に連絡が来ることがあるという訳です。

Q2.親族がいる場合は市区町村長による申立ては行われないのですか?

A2.そういう訳ではありません。

親族の調査(存在する場合はその意向の調査)を行うことが原則ではありますが、親族に申立ての義務はないので、意向がないことが確認できれば市区町村長による申立てを行うことができますし、急を要する事案であれば親族調査をすることなく市区町村長が申立てを行うこともあります。

実際のところ、近年は市区町村長による申立ての件数が増加傾向にあります。

なお、市区町村長による申立てには他の申立権者にはない条件があり、以下の者について本人の福祉を図るために特に必要がある場合に申立てができます。

  • 65歳以上の者(65歳未満の場合は、特に必要があると認められる者)
  • 精神障害者
  • 知的障害者

Q3.申立てにはどんな書類が必要ですか?

A3.以下の書類が必要です。

  • 申立書・申立事情説明書
  • 本人の住民票・戸籍謄本・登記されていないことの証明書
  • 診断書
  • 本人情報シート
  • 財産目録・収支予定表
  • 親族関係図・親族の同意書

裁判所によっては上記の他にも独自に提出書類を定めている所もあります。

ケアマネージャーが付いているならば本人情報シートの作成はその方に依頼すればよいですし、診断書の作成もケアマネージャー等から医師に依頼してもらえばよいでしょう。

財産・収支や親族関係については完璧でなくともわかる範囲で結構です。申立ての目的や本人の状態にもよりますが、正確性よりも迅速性が重要なケースが多いと思われます。

とはいえ不慣れであれば相応の手間と時間を要することは覚悟しておくべきです。

Q4.申立て費用は誰が負担するのですか?

Q4.原則として申立人の負担となります。

申立てに要する費用は以下の通りです。

  1. 家庭裁判所に納める収入印紙、郵券(切手)
  2. 鑑定費用(鑑定が必要と家庭裁判所が判断した場合のみ)
  3. 必要書類(Q2参照)の取得費用
  4. 専門家報酬(司法書士・弁護士に手続きを依頼した場合)

特に2・4がやや高額(数万円~十数万円)なので注意が必要です。1・2の費用は、申立ての際に本人負担とすることを希望すれば認められることがあります。また、3・4の費用についても事情によっては極めて例外的に本人負担が認められることもあるようです。

ただし、あくまで原則は申立人負担であり、本人負担とする手続きを踏まずに本人の預金口座からお金を引き出して申立て費用に充てたりすると、後で選任された成年後見人から返還を求められることになります

Q5.申立て書類を提出すれば後はやることはありませんか?

A5.書類提出後に、予備審問のために家庭裁判所へ行ったり、調査官が本人と面談する際に立ち会ったりする必要があります

病気や高齢等の事情があれば免除されることもあります(その旨の上申書の提出を求められることがあります)が、書類を提出したら終わりという訳ではないことにご注意ください。

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