成年後見・保佐・補助の違い

Q&A

Q1.成年後見・保佐・補助は何が違うのですか?

A1.本人の判断能力の程度が違います。成年後見は判断能力がない人、保佐は著しく不十分な人、補助は不十分な人が対象となります。

成年後見人が原則として全ての法律行為を本人に代わって行うことができる(代理権を有する)のに対し、保佐人・補助人は本人が自分でする一定の行為に同意することができる(同意権を有する)だけです。

保佐と補助では同意できる行為の範囲が異なっており、保佐人のほうが幅広い同意権を持っています。保佐人・補助人の同意を得ずに本人がしてしまった行為は、取り消すことができます。

なお、本人が同意すれば、保佐人・補助人も一定の行為について代理権を持つことが可能です。

Q2.判断能力の程度の違いについて教えてください

A2.成年後見・保佐・補助の対象者は、それぞれ以下の通りです。

<成年後見>

「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」が対象です。つまり、判断能力が常に欠けている状態の人です。

<保佐>

「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」が対象です。つまり、判断能力が著しく不十分な人です。

<補助>

「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」が対象です。つまり、判断能力が不十分な人です。

Q3.代理権について教えてください

A3.代理権とは、本人に代わって取引や契約等を行う権限のことです

成年後見人は包括的な代理権を持っており、原則として全ての法律行為を本人に代わって行うことができます。
※例外については『成年後見人にできないこと』参照。

保佐人・補助人は原則として代理権を持ちませんが、一定の行為につき、家庭裁判所から代理権を与える審判をしてもらうことができます。この審判には本人の同意が必要です(保佐・補助とも)。(なお、代理権を与えることができる行為は、民法13条に掲げられている行為に限られません。Q4参照。)

ただし、成年後見人・保佐人・補助人のいずれであっても、居住用不動産の処分(自宅の売却等)を代理で行うには家庭裁判所の許可が必要となります。

Q4.同意権・取消権について教えてください

A4.同意権とはその名の通り本人の行為に同意を与えることです。同意のない本人の行為は取り消すことができます。つまり、同意権と取消権は表裏一体です。(ただし、後述の通り成年後見は例外です。)

<成年後見>

成年後見人に同意権はありません。本人の行為は成年後見人の同意があってもなくても取り消すことができるからです。

ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消すことができません。

<保佐>

本人が一定の行為(民法13条に掲げられている)をするには、保佐人の同意が必要となります。これ以外の行為も必要に応じて追加することができます。(ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除きます。)

なお、補助の場合と異なり、同意権の付与・追加にあたって本人の同意は不要です。

【参考】民法13条(保佐人の同意を要する行為等)
  1. 元本を領収し、又は利用すること。
  2. 借財又は保証をすること。
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
  4. 訴訟行為をすること。
  5. 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
  8. 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
  9. 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
  10. 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

<補助>

本人が一定の行為をするには、補助人の同意が必要となります。一定の行為とは、民法13条に掲げられている行為の一部です。その他の行為を追加することはできません。

民法13条のうちどの行為に同意を必要とするかは、補助開始申立てのときに選択し、最終的には家庭裁判所が要否を判断します。補助人に同意権を付与するにあたっては、本人の同意が必要です。

なお、代理権のみを持ち(Q3参照)、同意権を一切持たないとすることも可能です。

Q5.成年後見・保佐・補助のどれを利用するかは、どうやって決めればよいですか?

A5.医師の診断書等をもとに本人の状態に応じて決定します

基本的には診断書通りの類型(成年後見・保佐・補助)で利用開始を家庭裁判所に申立てればその通りに開始されることがほとんどですが、場合によっては申立て後に精神鑑定が実施され、その結果等を鑑み別の類型が相当であると家庭裁判所が判断することもあり得ます。

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