遺贈にも色々ある

遺贈とは、遺言によって他人に財産を譲与することですが、いくつか種類があります。

Q&A

Q1.特定遺贈とは?

A1.遺言により、財産を特定して無償で他人に与えることです。

文例「X不動産を○○に遺贈する」

特定物(不動産、預貯金等)を遺贈することがほとんどですが、不特定物(金銭、米〇㎏等)でも構いません。

Q2.包括遺贈とは?

A2.遺言により、遺産の全部または割合的に他人に与えることです。

文例1「財産の全部を○○に包括して遺贈する」
文例2「財産の全部をABCの3名に対し3分の1ずつの割合で包括して遺贈する」

文例1を全部包括遺贈、文例2を割合的包括遺贈といいます。

文例2の場合は、具体的な遺産の分け方について、別途相続人間での遺産分割協議が必要となります。紛争を避けるためには、全財産について漏れなく何を誰に与えるのかを遺言の中で具体的に定めた方がよいと思います。

Q3.特定遺贈と包括遺贈の違い - 権利義務について

A3.包括受遺者(包括遺贈を受けた人)は相続人と同一の権利義務を有します。

遺贈は相続人以外の第三者に対してもすることができますが、この場合、包括受遺者は相続人でなくとも遺産分割協議に参加できるということです。(ただし、全財産が1人に包括遺贈された場合は、遺産分割協議自体が必要ありません。)

一方で、特定遺贈を受けた第三者にはこのような権利義務はありません。

Q4.特定遺贈と包括遺贈の違い - 消極財産について

A4.包括遺贈の場合は、積極財産(プラスの財産)も消極財産(マイナスの財産)もどちらも承継することになります。

一方で、特定遺贈の場合は積極財産だけを承継します。

なお、債権者との関係については以下の記事をご参照ください。
※『遺言で債務の相続割合を決めることはできるか

Q5.特定遺贈と包括遺贈の違い - 放棄の方法について

A5.包括遺贈を放棄するには、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。

包括受遺者(包括遺贈を受けた人)は法定相続人と同一の権利義務を有するため(Q3参照)、放棄についても法定相続人と同様の方法で行う必要があります。

一方で、特定遺贈を受けた人はいつでも遺贈の放棄ができます。家庭裁判所に申述する必要はありませんし、3カ月という期間制限もありません。

Q6.負担付遺贈とは?

A6.受遺者に一定の義務を負担させることを内容とした遺贈です。

例えば、「残された配偶者の介護をすることを条件に全財産を遺贈する」というようなものです。

負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができます。また、期間内に履行がないときは、遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます。

Q7.清算型遺贈とは?

A7.財産を換価(不動産の売却、預貯金の払い戻し、有価証券の売却等)し、負債を返済した上で残りの財産を遺贈するというものです。

文例「全財産を処分し、その処分金をもって遺言者の全債務を弁済し、残金を○○に遺贈する」

Q8.遺贈と「相続させる」遺言の違いは?

A8.特定の財産を相続人の1人または数人に承継させる旨の遺言を特定財産承継遺といいます。

文例「X不動産を○○に相続させる」

「遺贈する」と書いても同じことですが、遺贈は第三者に対してもすることができるのに対し、「相続させる」ことは法定相続人に対してしかできません。

なお、配偶者居住権は遺贈できますが特定財産承継遺言により相続させることはできません。ただし、「相続させる」と書いてしまっても遺贈の趣旨と解されます。
※『配偶者居住権とは?』参照。

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