成年後見人にできないこと
1.医療同意
成年後見人は入院手続きや医療契約の締結をすることはできますが、入院すること自体の決定や医療行為の同意をする権限はありません。
本人もしくは親族の同意が必要となりますが、本人に意思能力が全くなく身寄りもない場合にはどうすればよいのか、明確な答えがないのが現状です。
2.保証人
施設入所にあたり保証人を求められることがありますが、成年後見人は保証人になることはできません。
施設への支払いができなくなった場合、保証人が自身の財産から支払うことになりますが、保証人は本人に求償(立て替えたお金を請求)することができ、これが利益相反行為(下記6参照)に該当するからです。
3.身分行為
以下のような身分行為については、成年後見人は代理権も取消権も有しません。
- 婚姻、離婚
- 認知
- 養子縁組、離縁
- 遺言
4.死後事務
後見は本人の死亡により終了するので、成年後見人には死後事務を行う権利も義務もありません。
死後事務とは、例えば遺体の引取り、火葬・埋葬、葬儀、債務の支払い、住居の明渡し、納骨、永代供養などです。
実際には、身寄りがない場合や親族が疎遠で非協力的な場合にはやむを得ず成年後見人が行うこともあります。
応急処分義務(民法874条による民法654条準用)や事務管理(民法697条)を根拠として行いますが、非常に曖昧な根拠なので、行う事務は必要最低限のものとすべきです。
例外的に、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができます。(民法873条の2)
- 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
- 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
- その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為
※3の行為をするには家庭裁判所の許可を得なければなりません。
なお、上記の行為を例外的に行うことができるのは成年後見人だけであり、保佐人、補助人、任意後見人、未成年後見人はできません。
5.居住用不動産の売却等
本人のために必要であればできますが、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
現在は施設に入所していても、かつて居住していた不動産は「居住用不動産」に該当するので要注意です。
売却だけでなく、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定等も許可が必要です。
6.本人との利益相反行為
例えば、子が母の成年後見人になっている場合、父が亡くなると母も子も相続人となり遺産分割協議をする必要がありますが、成年後見人(子)が本人(母)を代理して遺産分割協議を行うことは利益相反行為にあたります。
この場合、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらい、その行為に限っては特別代理人が本人を代理することとなります。ただし、成年後見監督人がいる場合は成年後見監督人が本人を代理します。
7.事実行為
成年後見人は介護契約や施設入所契約等の法律行為を代理する権限を有するのであって、成年後見人自身が直接本人を介護・看護したり家事を行ったりする義務はありません。
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