Q&A
Q1.遺言にはどんなことを書いてもいいのですか?
A1.遺言に書けることは法律で決められています。(「法定遺言事項」といいます。)
それ以外のことを書いても構いませんが、法的な拘束力はありません。(遺言者の願い・希望に過ぎず、相続人がそれに縛られることはないということです。「付言事項(ふげんじこう)」といいます。)
Q2.法定遺言事項とはどのようなものですか?
A2.遺産を誰に残すか、どのように分けるかに関する事項が中心です。他に一般財団法人の設立や子の認知等もできますが、実例は多くありません。
※3、14は民法上「遺言で」と明記されてはいませんが、遺言でも可能と解釈されています。
※3については『配偶者に自宅の他にも財産を残したい - 持戻し免除とは』参照。
Q3.法定遺言事項は必ず遺言でしなければならないのですか?
A3.生前のうちに行うのであれば、もちろん遺言でなくても構いません。
典型的なのは贈与ですが、相続人の廃除・特別受益の持戻し免除・祭祀主宰者の指定も生前に可能です。
また、一般財団法人の設立・信託の設定・生命保険の受取人の変更・子の認知も可能です。(これらはむしろ生前に行うことのほうが多いと思います。)
その他の事項は生前に行うことはできず、遺言でしなければなりません。生前に行うことができる事項も死後に行うのであれば遺言の形式をとる必要があります。
ただし例外的に、特別受益の持戻し免除と祭祀主宰者の指定は、死後に行う場合であっても遺言の形式に限られないと考えられています。(民法の条文上「遺言で」と明記されていないため。)
Q4.法定遺言事項であれば必ず遺言に書いた通りになりますか?
A4.残念ながら必ずとは言い切れません。
相続人全員で合意できるならば、遺言とは異なる遺産の分け方をすることも可能です。(ただし、相続人以外の第三者への遺贈がある場合は話は別です。その第三者を無視して遺産を分けると最悪訴訟になります。)
また、相続も遺贈も放棄することができます。遺言は遺言者だけで自由に内容を決めることができる反面、受け取る側にも拒否する自由があるということです。
同様に、遺言執行者に指定された人も、就任を拒否することができます。
財産を受け取る意思があるのか、遺言執行者に就任してもらえるのか、生前のうちに確認しておくことが望ましいと言えます。
ただし、決して遺言を残す意味がないという訳ではありません。相続人のうち1人でも合意しない場合は、遺言に基づいて遺産を分ける必要があります。
Q5.法定遺言事項ではないこと(葬儀など)の希望を確実に実現するにはどうすればよいですか?
A5.死後事務委任契約を締結します。事案によっては、民事信託(家族信託)契約が有効な場合もあります。
いずれも契約であるため、依頼先(死後事務受任者・受託者)は取り決めた事務を遂行する義務があります。この点が遺言との違いです。怠った場合は債務不履行責任や損害賠償責任を負います。
<参考記事>
・『死後事務委任契約とは』
・『民事信託について』(当事務所HP)
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