遺産分割前でも預貯金の払戻しができます

民法(相続法)改正により、令和元年7月1日から、遺産分割協議が整う前であっても一定の金額まで預貯金の払戻しができるようになりました。

Q&A

Q1.払戻しできる金額はいくらですか?

A1.払戻しをする人の法定相続分の3分の1です。ただし、150万円が上限です。

Q2.複数の金融機関(A銀行とB銀行)に預貯金がある場合でも上限は150万円ですか?

A2.いいえ。上限金額は金融機関ごとに定められています。つまり、A銀行とB銀行でそれぞれ150万円(合計300万円)が上限となります。ただし、法定相続分×1/3が150万円に満たないのであればその額が上限です(Q1参照)。

Q3.同じ金融機関に複数の口座(例えば普通預金と定期預金)がある場合でも上限は150万円ですか?

A3.はい。上限は金融機関ごとなので、普通預金と定期預金があっても上限は合わせて150万円までです。なお、法定相続分×1/3が150万円に満たないのであればその額が上限です(Q1参照)。

Q4.同じ金融機関の複数の支店に口座がある場合でも上限は150万円ですか?

A4.はい。上限は金融機関ごとなので、X支店とY支店に口座があっても上限は合わせて150万円までです。なお、法定相続分×1/3が150万円に満たないのであればその額が上限です(Q1参照)。

Q5.同じ金融機関に複数の口座(例えば普通預金と定期預金)がある場合、具体的にはどのように払戻されるのですか?

A5.払戻し金額は口座ごとに計算します。例えば普通預金300万円、定期預金240万円で、あなたの法定相続分が2分の1の場合、払戻し金額は以下の通りになります。

  • 普通預金 300万円×1/2×1/3=50万円
  • 定期預金 240万円×1/2×1/3=40万円

普通預金だけから90万円の払戻しを受けることはできません。なお、定期預金の払戻しを受けるには満期が到来している必要があります。

別の例として、普通預金1200万円、定期預金1200万円、法定相続分2分の1の場合、払戻し金額は以下の通りとなり、上限150万円となります。(普通預金と定期預金を合わせて。Q3参照。)

  • 普通預金 1200万円×1/2×1/3=200万円
  • 定期預金 1200万円×1/2×1/3=200万円

この場合、どちらの口座から払戻しを受けるかは自由です。普通預金から100万円、定期預金から50万円といった払戻し方法も可能です。

Q6.同じ金融機関の複数の支店に口座がある場合、具体的にはどのように払戻されるのですか?

A6.どの支店から払戻しを受けるかは自由ですが、当然ながらその支店口座の残高を超える額は受け取ることができません。例えば払戻し金額が上限の150万円で、X支店に100万円、Y支店に200万円の残高があった場合、X支店とY支店から75万円ずつ払戻しを受けたり、Y支店のみから150万円の払戻しを受けることは可能ですが、X支店のみから150万円の払戻しを受けることはできません。

Q7.払戻し金額の計算における預貯金額は相続開始時の金額ですか?払戻し時の金額ですか?

A7.相続開始時(被相続人の死亡時)の金額です。相続開始時に300万円あった残高が、その後自動引き落としや他の相続人による払戻し等により200万円になっていたとしても、300万円をベースに計算します。つまり、300万円×法定相続分×1/3 です。

この額が払戻し時の残高を超える場合は、その超過分は受け取ることができません。金融機関が不足分を支払わなければならない理由はないからです。

Q8.払戻しをする際、金融機関に提出する書類を教えてください。

A8.以下の書類が必要です。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍全て
  2. 相続人全員の戸籍(現在戸籍のみでOK)
  3. 払戻しをする人の印鑑証明書

※上記1、2は法定相続情報証明で代用できます。

Q9.払戻しを受けた後に遺産分割協議で他の相続人が預貯金を相続することになった場合、返還しなければなりませんか?

A9.返還は不要です。払戻した金額は、遺産の一部分割によりあなたが取得したものとみなされるからです。ただし、払戻しを受けた額があなたの相続分を超えていた場合は、その超過分は返還(清算)する必要があります。

Q10.遺言や遺産分割協議により私が単独で相続することになっている場合でも、他の相続人は払戻しができてしまうのですか?

A10.できます。金融機関としては、必要書類が揃っていれば払戻しに応じざるを得ません。

これを防ぐためには、あなた(預貯金を相続した人)もしくは遺言執行者から金融機関に対し、遺言や遺産分割の内容を明らかにした上で通知をする必要があります。

Q11.払戻しをすることにより不利益を被る可能性はありますか?

A11.相続を単純承認したとみなされる可能性があるため、後で被相続人に多額の借金があることが判明しても相続放棄が認められない恐れがあります

コメント

タイトルとURLをコピーしました