後見人は本人の財産管理だけでなく身上保護(身上監護)業務も行います。身上保護とは、生活・療養看護に関する事務のことをいいます。
具体的には以下のような業務です。
後見の身上保護業務とは
1.住居に関する事項
本人の住環境の確保や改善に関する事項であり、具体的には以下のような事務です。
- 居住用不動産の購入・売却
- 賃貸契約の締結・変更・解除
- 住居の新築・増改築・修繕に関する請負契約の締結・変更・解除
ただし、後見人に本人の居所を指定する権限はありません。
居住環境の変化は本人の身上面に与える影響が極めて大きいため、成年後見人は居住用不動産の処分(売却・賃貸契約の解除)をするには家庭裁判所の許可を得る必要があります。任意後見人の場合も、契約で任意後見監督人の同意を必要とするように取り決めることがあります。
2.医療に関する事項
具体的には以下のような事務です。
- 医療契約の締結・変更・解除
- 病院への入院に関する契約の締結・変更・解除
- 上記に関する費用の支払い
ただし、後見人に医療行為の同意をする権限や、入院すること自体の決定権はありません。
また、病院から身元保証人・身元引受人になることを求められることがありますが、後見人にその義務はありませんしなるべきではありません。仮に入院費用等を後見人が立て替えると、本人に対して立替金の返還を求める権利が生じ、利益が相反することになるからです。(なお、医師は身元保証人等がいないことを理由に入院を拒否することはできません。)
3.介護サービスの利用
具体的には以下のような事務です。
- 要支援・要介護認定の申請
- ケアプランの作成
- 介護契約・福祉サービスの利用契約の締結・変更・解除
- 福祉関係施設への入所・有料老人ホームへの入居に関する契約の締結・変更・解除
要支援・要介護認定の申請は地域包括支援センターや介護保険施設に依頼することもできます。ケアプランの作成はケアマネジャーに依頼します。
後見人は、ケアプランに従って必要なサービス提供業者と利用契約を締結します。契約締結後はきちんとサービスが提供されているか確認し、場合によっては改善を求めたり苦情申し立てをすることも後見人の業務です。
なお、後見人自らが介護を行う義務はありません。
4.日常生活の支援
具体的には以下のような事務です。
- 生活費の送金
- 日用品の購入、日用品以外の生活に必要な機器・物品の購入
- 宅配弁当の利用
- 住宅の修繕・清掃
- 除草・草刈り
なお、後見人自らが実作業(買い物や草刈り等)を行う義務はありません。後見人の仕事は、これらを行ってくれるサービス(訪問介護サービスやシルバー人材センター等)を選定し契約を結ぶことです。
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