相続の分野において各士業ができることを以下に記述します。まずは司法書士か税理士に相談に行く人が多いと思います。大体は知り合いの他士業がいるので、どちらに相談に行っても必要に応じて他士業を紹介してくれます。当事務所もご希望の場合は税理士等をご紹介します。
1.司法書士
不動産の名義変更を代理できるのは司法書士だけです。遺産に不動産がある場合は司法書士にご相談ください。また、裁判所への提出書類を作成できるのも司法書士だけです。例えば、相続放棄や遺言書の検認は家庭裁判所に対して申し立てる必要があります。これらに限らず、司法書士は総じて皆相続法に詳しいので、相続全般について幅広くご相談に応じることができます。
2.税理士
相続税申告や準確定申告を代理できるのは税理士だけです。今回の相続では相続税が発生しなくても、次の相続(例えば、今回は夫が亡くなり妻と子が相続したが、次に妻が亡くなり子が相続する場合)で相続税が発生する可能性があるため、先のことも見据えて節税を考えたい場合等はやはり税理士に相談すべきです。 法人の税務顧問が主業務であるため相続税には強くない税理士も多いので見極めが重要です。また、法律家ではないので税務以外のことは司法書士等に相談したほうがよいでしょう。
3.行政書士
官公署への書類提出を代理できるのは行政書士だけです。相続に関しては自動車の名義変更や未登記家屋の所有者変届出等が考えられます。行政書士業務は幅広いですが、メインは事業の許認可申請等なので、依頼するならば相続に強い行政書士なのかきちんと見極める必要があります。なお、前述の通り登記や検認・相続放棄の手続きについて取り扱ったり相談に応じたりすることはできません。
4.社会保険労務士
相続について社会保険労務士が関与することはほとんどありませんが、年金関係の手続きを代理できるのは社会保険労務士だけです。遺族年金等を受給できる可能性がある場合は相談してみましょう。また、役所に申請すると葬祭費の補助金(3~5万円程度、自治体により異なる)がもらえることがあります。これは国民健康保険から支給されるのでやはり社会保険労務士しか手続きを代理できません。(ただし、わざわざ報酬を払ってまで頼むほど大変な手続きではないと思います。)
5.弁護士
弁護士は上記の各士業の業務を全て行う権限があります。ただし、業務範囲が広いが故に、相続に強い弁護士なのかきちんと見極める必要があります。仮に強いと謳っていたとしても、やはり登記は司法書士に、税務は税理士に相談すべきです。弁護士しかできないことは「紛争への介入」です。相続人の間で話がこじれてしまって、もはや争うしかないとなると弁護士に依頼するしかありません。ただし、まだ穏便に進められる余地があるのに弁護士を立ててしまったがために他の相続人が機嫌を損ねて余計にこじれてしまうというケースもあるので注意が必要です。
司法書士も訴額140万円以下の簡易裁判所での事件に限り紛争に介入できますが、相続を巡る争いは家庭裁判所の管轄なので司法書士は代理人になることはできません。