合同会社から株式会社への組織変更

合同会社を設立したものの、後からやっぱり株式会社にしたいということがあります。

いったん合同会社をたたんで一から株式会社を設立するという方法もありますが、費用も手間も時間もかかるため、通常は組織変更という手段をとります。

以下、具体例を掲載します。(同時に商号変更と役員増員も行ったケースです。)

押印について

以下、登記申請手続き上は押印必須とされていない箇所に「押印不要」と記載していますが、当事務所での手続きにおいては確実な意思確認のため押印をお願いすることがあります。

合同会社から株式会社への組織変更

1.登記申請書

(1/2)株式会社の設立

商号(フリガナ) エービーシー
商号 エービーシー株式会社
本店 ○○市○○町1番地
登記の事由 組織変更による設立
登記すべき事項 別紙のとおり
課税標準金額 金 200,000 円
登録免許税額 金 30,000 円(※1)
添付書類
 総社員の同意書 1通
 組織変更計画書 1通
 定款
 「総社員の同意書(組織変更計画書)の記載を援用する」(※2)
 取締役の就任承諾書 2通
 代表取締役の就任承諾書 1通
 印鑑証明書 2通(※3)
 公告及び催告をしたことを証する書面 2通
 「異議を述べた債権者はない」
 登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書 1通
 委任状 1通
上記のとおり登記を申請する。
令和〇年〇月〇日
 申請人 ○○市○○町1番地 エービーシー株式会社
 ○○市○○町2番地 代表取締役 山田太郎
 上記代理人 神奈川県藤沢市辻堂元町一丁目5番20号 司法書士 吉村健
 連絡先の電話番号 0466-47-8455
〇〇法務局 御中

別紙(登記すべき事項)
「商号」エービーシー株式会社
「本店」○○市○○町1番地
「公告をする方法」官報に掲載する方法により行う。
「会社成立の年月日」令和〇年〇月〇日
「目的」
1.○○○○
2.○○○○
3.上記各号に附帯する一切の事業
「発行可能株式総数」1000株
「発行済株式の総数並びに種類及び数」
「発行済株式の総数」20株
「資本金の額」金20万円
「株式の譲渡制限に関する規定」
当会社の発行する株式の譲渡による取得については、株主総会の承認を受けなければならない。
「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」山田太郎
「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」山田花子
「役員に関する事項」
「資格」代表取締役
「住所」○○市○○町2番地
「氏名」山田太郎
「登記記録に関する事項」
令和〇年〇月〇日ABC合同会社を組織変更し設立

※1 組織変更にあたり資本金の増加がない場合、資本金額の1.5/1000(最低3万円)。商号変更・役員増員分の加算は不要。
※2 総社員の同意書の別紙として組織変更計画書を、組織変更計画書の別紙として定款を添付(合綴)する。(下記「2.添付書類(総社員の同意書・組織変更計画書・定款)」参照。)
※3 各取締役の本人確認証明書として。登記手続き上は運転免許証のコピー等でも構いませんが、当事務所では印鑑証明書を提出いただき、就任承諾書に実印での押印をお願いしています。

(2/2)合同会社の解散

商号(フリガナ) エービーシー
商号 ABC合同会社
本店 ○○市○○町1番地
登記の事由 組織変更による解散
登記すべき事項 別紙のとおり
登録免許税額 金 30,000 円
上記のとおり登記を申請する。(※4)
令和〇年〇月〇日
 申請人 ○○市○○町1番地 エービーシー株式会社(※5)
 ○○市○○町2番地 代表取締役 山田太郎
 上記代理人 神奈川県藤沢市辻堂元町一丁目5番20号 司法書士 吉村健
 連絡先の電話番号 0466-47-8455
〇〇法務局 御中

別紙(登記すべき事項)
「登記記録に関する事項」
令和〇年〇月〇日○○市○○町1番地エービーシー株式会社に組織変更し解散

※4 添付書類は必要なし。(委任状も不要)
※5 組織変更後の株式会社を記載。

2.添付書類(総社員の同意書・組織変更計画書・定款)

総社員の同意書

当会社の組織変更に関し、総社員の同意をもって次の事項を決議する。
1.別紙組織変更計画書に同意すること。
2.社員の権利義務は、新会社となるまではABC合同会社の定款及び従来の決議により、新会社となった日以降は、その新会社の定款の規定するところによること。
以上のとおり決議する。

令和〇年〇月〇日
ABC合同会社
社員 山田太郎(※1)

※1 押印不要。

組織変更計画書

1.商号 エービーシー株式会社
2.本店の所在地 ○○市(※2)
3.目的
 1.○○○○
 2.○○○○
 3.上記各号に附帯する一切の事業
4.発行可能株式総数 1000株
5.新会社の定款については別紙のとおりとする
6.新会社の最初の役員は次のとおりとする
 ○○市○○町2番地 取締役 山田太郎
 ○○市○○町2番地 取締役 山田花子
 ○○市○○町2番地 代表取締役 山田太郎
7.組織変更をする持分会社の社員が組織変更に際して取得する組織変更後の株式の数又はその数の算定方法
 20株
8.組織変更をする持分会社の社員に対する割当てに関する事項
  以下のとおり割り当てることとする。
  社員 山田太郎について20株
9.組織変更の効力発生日 令和〇年〇月〇日(※3)

※2 所在場所まで決める必要はない。(市まででOK)
※3 組織変更計画書で定めた効力発生日に組織変更の効力が発生します(登記申請日ではありません)。なお、株式会社の登記事項証明書の「会社成立の年月日」には旧合同会社の設立日が記載されます。

定款(※4)

(省略)

(組織変更後最初の取締役、代表取締役)
第〇条 当会社の組織変更後最初の取締役、代表取締役は、次のとおりとする。
 ○○市○○町2番地 取締役 山田太郎
 ○○市○○町2番地 取締役 山田花子
 ○○市○○町2番地 代表取締役 山田太郎

上記定款は、○○市○○町1番地 ABC合同会社の組織を変更して株式会社とするにつき作成したものであって、組織変更が効力を生じた日から、これを施行するものとする。

※4 公証人による認証不要。(原始定款の絶対的記載事項である)発起人や出資金の記載不要。原本と相違ない旨の奥書きや押印も不要。

3.添付書類(公告及び催告をしたことを証する書面)

公告を掲載した官報と債権者への催告書を添付します。なお、債権者の異議申出期間は1か月以上とする必要があるので、官報掲載の申込から掲載されるまでの時間も含めると、組織変更の手続きには最低でも1.5か月~2か月はかかるということになります。

官報(※1)

組織変更公告
当社は、株式会社に組織変更することにいたしました。
効力発生日は令和〇年〇月〇日であり、組織変更後の商号はエービーシー株式会社とします。
この組織変更に異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
令和〇年〇月〇日
○○県○○市○○町1番地 ABC合同会社
代表社員 山田太郎

※1 コピーを添付することで原本還付可能。コピーは公告が掲載されたページのみでOK。

催告書

拝啓 時下益々御清祥の事と存じ上げます。
さて、今般当会社は令和〇年〇月〇日、総社員の同意書によりその組織を変更して、○○市○○町1番地 エービーシー株式会社とすることを決議いたしましたので、組織変更につきご異議がありましたら令和〇年〇月〇日までにその旨をお申し出下さい。
以上のとおり催告いたします。

令和〇年〇月〇日
 ○○市○○町1番地
 ABC合同会社
 代表社員 山田太郎

株式会社〇〇銀行 御中

上記は催告書の原本の控えに相違ありません。(※2)
令和〇年〇月〇日
 ○○市○○町1番地
 ABC合同会社
 代表社員 山田太郎(※3)

※2 催告書の原本は債権者に送付するので控えでOK。なお、催告にあたっては催告書だけでなく組織変更計画書等の書類も併せて債権者に送付することが通常です。
※3 押印不要。

【参考】上申書(※4)

令和〇年〇月〇日総社員の同意により、ABC合同会社をエービーシー株式会社に組織変更することについて、会社法第781条の規定により債権者に対し公告及び催告を致しましたが、所定の期間内に異議を述べた債権者は1名もありませんでした。

令和〇年〇月〇日
 ○○市○○町1番地
 ABC合同会社
 代表社員 山田太郎(※5)

○○法務局 御中

※4 登記申請書に「異議を述べた債権者はない」と記載した場合は添付不要です。
※5 押印不要。

4.添付書類(登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書)

登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書

登録免許税法施行規則第12条第4項に掲げる額は、次のとおりである。

①組織変更をする会社の当該組織変更の直前における資産の額(登録免許税法施行規則第12条第4項第1号)
金○○円
②組織変更をする会社の当該組織変更の直前における負債の額(登録免許税法施行規則第12条第4項第1号)
金○○円
③組織変更後の株式会社又は合同会社が当該組織変更に際して当該組織変更の直前の会社の株主又は社員に対して交付する財産(当該組織変更後の株式会社の株式及び合同会社の持分を除く。)の価額(登録免許税法施行規則第12条第4項第2号)
金0円

上記の額に相違のないことを証明する。

令和〇年〇月〇日
 ○○市○○町1番地
 エービーシー株式会社
 代表取締役 山田太郎(※1)

※1 押印不要。

5.印鑑届

登記申請とは別に、株式会社の代表取締役として印鑑届書を提出します。

合同会社から株式会社に変わるため通常は印鑑も作り直すことが多いでしょうが、仮に合同会社の印鑑をそのまま使い続ける場合であっても、改めて印鑑届をする必要があります。

なお、登記申請の委任状には新しい(株式会社の)印鑑で押印します。

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