任意後見人、成年後見人、遺言執行者、死後事務受任者、いずれも個人だけでなく法人でもなれます。
個人の場合、先に亡くなるリスクがあるので、この点を指摘して「うちは法人だから安心です!」と謳っている事務所や団体があります。
確かにその通りではあるのですが、個人事務所を経営する身として、敢えて反論してみたいと思います。
法人に依頼する際の注意点
1.法人の実体にご注意を
後見人等(任意後見人、成年後見人、遺言執行者、死後事務受任者)になる資格に制限はありません。司法書士や弁護士に限られないということです。実際に親族が後見人等になっているケースは多々あります。
ですが、第三者に依頼するのであれば、法律の専門家を強くお勧めします。
司法書士法人や弁護士法人の他にも後見人等を請け負っている団体はありますが、中には怪しい団体もあるので実体をよく確認する必要があります。
実際の例として、老人ホーム入所にあたって身元保証人となる代わりに全財産を死因贈与する契約を結ばせていたことが問題となったNPO法人があります。(NPO法人が全て怪しいと言っている訳ではありません。念の為。)
2.費用が安いとは限らない
法人・団体によって費用は様々です。
場合によっては、地元の個人の司法書士2人に依頼するほうが安い可能性もあります。
任意後見契約については、契約書を1通にまとめたとしても任意後見人の数だけ公証人手数料が掛かってしまいますが、それでも1つの法人に依頼するよりもトータルの費用が安くなることはあり得ますので、十分に比較検討なさることをお勧めします。
間違っても、信託銀行に依頼してはいけません。
3.法人は中の人が入れ替わる
後見人等を任せる人とは、信頼関係が大事です。親族ではない第三者に任せるとなれば尚更です。
法人は就職・離職により中の人が入れ替わります。あなたの任意後見契約や遺言書の作成を担当してくれた人は、将来契約が発効したり相続が開始した時にはもういないかもしれません。
実際、司法書士法人は経験の浅い司法書士が独立開業するまでの修行の場となっていることも多いのです。(実体験より)
4.1人法人の可能性も
法人と言いつつ実態は1人だけ、ということもあり得ます。司法書士法人も1人法人の設立ができるようになりました。
また、事務員はたくさんいても資格を有する専門家は1人だけ、という可能性もあります。
法人を名乗っているからといって必ずしも専門家が複数所属しているとは限らないので要注意です。
5.解散のリスク
個人に死亡のリスクがあるのと同様、法人にも解散のリスクがあります。
仲の良い司法書士が集まって法人を立ち上げたものの、次第に仲が悪くなって解散するケースもあります。
法人といいつつ実態はボスのワンマン経営のような事務所は、ボスに何かあったら立ち行かなくなります。
法人化して事業を広げた結果、失敗して経営が難しくなる可能性もあります。
個人と比べて法人のほうが永続性が高いとは、必ずしも言い切れないと思います。
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