不動産の登記をするかどうかは任意です。ですが、売買が発生するとほぼ必ず所有権移転の登記をします。そもそも「登記」とは何なのでしょうか?
1.所有権の「証明」ではない
「登記がある」ということは、「所有者である」ということを証明する程の強い効力はありません。真の所有者を名乗る者がその証拠を積み上げて訴えてきた時には、負ける可能性もあります。ただし、証拠を積み上げて自己の所有権を証明する必要があるのは「登記のない者」のほうであり、証明できなかった時は「登記のある者」は何もしなくても勝てます。裁判において「立証責任がどちらにあるか」は非常に大きな問題です。当然ながら立証責任のないほうが圧倒的に有利なので、これだけでも登記を備えておく理由としては十分です。
2.登記は「第三者対抗要件」である
意味が分からないと思うので、売買の例でご説明します。AさんがBさんに不動産を売って、その後Cさんにも同じ不動産を売った場合、どうなるでしょうか。先に買ったのはBさんなのだから、Bさんの所有権が認められそうですよね。でも、勝つのは「登記を先に入れたほう」です。売買の先後は関係ありません。仮にCさんが先に登記を備えると、BさんはCさんに所有権を主張できません。
AB間の売買において、AさんとBさんは当事者同士です(第三者ではありません。)。BさんはAさんに売買の有効性を主張し、損害賠償を請求することができます。しかし、BさんにとってCさんは第三者です(CさんにとってもBさんは第三者です。)。第三者同士では登記で決着をつけます。この場合、先に登記を備えたCさんは、Bさんに所有権を主張できるのです。これが「第三者対抗要件」の意味です。
3.CさんがAB間の売買を知っていた場合は?
先にAB間で売買されたことをCさんが知っていた場合、CさんはBさんに所有権を主張できないように思えますよね。でもこれも関係ありません。例え知っていたとしても登記を先に備えたほうの勝ちです。市場における取引は自由競争が原則です。うかうかしていて先を越されたBさんが悪いということになるのです。ただし、CさんがBさんに不当に高値で売りつける目的等があった場合は話は別です。悪だくみをしたCさんの権利を保護する理由はないので、Bさんは登記がなくてもCさんに所有権を主張できます。