ずっと昔に登記された抵当権や質権が残っている土地があります。このような土地を売ったり担保に入れたりするには、通常はこれらの登記を抹消する必要があります。
今までもこのようなケースに対応するための手続きはあったのですが、手続きの負担が重く、実際にはあまり利用されていませんでした。
不動産登記法改正(令和5年4月1日施行)により、担保権者が解散した法人である場合における登記抹消手続きが簡略化されました。
※実際に当該手続きを利用した事例については『不動産登記法第70条の2の規定による抹消』参照。
Q&A
Q1.どのような権利が対象となりますか?
A1.先取特権、質権、抵当権です。
質権については、この手続きの他に存続期間経過後の簡易手続きも利用できる可能性があります。
なお、根抵当権・根質権については現時点では不明ですが、従来の手続きと同様に弁済期を元本確定日とみなして本手続きが利用可能となるものと思われます。
Q2.どのような場合に利用できますか?
A2.以下の要件を全て満たす場合に、不動産所有者単独で登記の抹消の申請ができます。
- 担保権者である法人が解散していること
- 調査を行っても法人の清算人の所在が判明しないこと
- 被担保債権の弁済期から30年を経過していること
- 法人の解散の日から30年を経過していること
Q3.法人の清算人の所在について、具体的にどのような調査をする必要がありますか?
A3.公的書類(※)により、登記されている法人の清算人が死亡していること、あるいはその生死・所在が不明であることを確認します。現地調査までは不要とされています。
※具体的には以下のような書類が想定されます。
- 商業登記記録上の清算人の住所についての不在住証明書・不在籍証明書
- 商業登記記録上の清算人の住所に宛てた郵便物が不到達となったことを証する書面
なお、清算人が死亡している場合であっても、裁判所に対して清算人の選任を請求することまでは不要です。
また、清算人が死亡していてもその相続人を調査する必要はありません。清算人の地位は一身専属的なものであり相続されないからです。
Q4.法人の清算人が見つかった場合は、この手続きは利用できないのですか?
A4.利用できません。
調査の結果、法人の清算人が見つかった場合は、原則通り清算人と共同して登記の抹消手続きを行う必要があります。
Q5.法人の閉鎖登記簿が保存期間の経過により廃棄されており取得できない場合、この手続きは利用できないのですか?
A5.利用できます。
閉鎖登記簿が存在しない場合は解散から30年経過していることを確認できませんが、実際はその可能性が極めて高いと考えられるので、30年経過している場合と同様に取り扱うものとされています。
Q6.弁済期はどのように確認すればよいのですか?
A6.金銭消費貸借契約書等があればその記載を確認すればよいのですが、そのような書類は紛失している場合が多いでしょう。
弁済期の確認方法については、従来の手続きと同様の運用になるものと思われます。
※『供託により古い抵当権等を抹消する方法』参照。
Q7.施行日(令和5年4月1日)前に登記されている権利についても、この手続きは利用できますか?
A7.利用できます。
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