被相続人の最後の住所と登記簿上の住所が違うとき

この場合、相続登記の手続きが厄介になることがよくあります。

登記を受け付ける法務局は、住所と氏名の一致をもって同一人物と判断するため、登記簿上の住所が住民票の住所と異なっている時は、その繋がり(変遷)を証明する必要があります。

登記簿上の住所が1つ前の住所ならば、被相続人の住民票の除票に前住所として記載されているので問題ありません。住民票の除票に登記簿上の住所の記載がない場合、被相続人の本籍地を管轄する役所にて「戸籍の附票」を取得する必要があります。戸籍の附票は戸籍とは別物で、住所の変遷が記載されています。通常はこれに登記簿上の住所から最後の住所までの変遷が記載されているため、これを添付すれば問題なく相続登記できます。

ところが、戸籍の附票も戸籍と同じく改製される(作り直される)ことがあり、古い戸籍の附票は廃棄されてしまっていることがあります。こうなるともはや住所の変遷を証明することができません。

令和元年6月20日より住民票の除票や戸籍の附票の保存期間が150年に延長されましたが、これ以前の保存期間はわずか5年であったため、廃棄されてしまっていることが往々にしてあります。

この場合、「権利証」があれば登記可能ですが、紛失している場合にどうすればいいかは法務局ごとに対応が異なるというのが実情です。「上申書」(相続人全員が、被相続人と登記簿上の名義人が同一人物であることを上申する書面に実印を押して印鑑証明書を添付したもの)の他、「不在住・不在籍証明書」(登記簿上の住所が居住地でも本籍地でもないことの証明書)や固定資産税の納税通知書(または固定資産評価証明書)等の書類を求められることがあります。珍しい例ですが、奈良の法務局で「保証書」なるものを求められたことがあります。上申書と似たような書類ですが、相続人以外の第三者2名により実印にて押印し、印鑑証明書を添付せよとのことでした。

被相続人がずっと昔に取得した不動産は、住所が古いままのケースが多々ありますのでご注意ください。なお、上申書等が必要となった場合はそれらの書類は当事務所にて作成いたします。(署名・捺印および印鑑証明書の取得はお客様にてお願いいたします。)