被保佐人の住所変更登記

私が保佐人に付いている方が施設に入ることになったので、持ち家の住所変更登記を行うことになりました。通常、保佐人には同意見があるだけで代理権はないのですが、必要な場合は代理権も付与することができます。本件はそのケースで、代理行為目録に「登記・登録の申請」が含まれていたため、保佐人である私が代理で登記申請を行うことになりました。

自分から自分への委任状が必要?

代理権限証明情報として保佐の「登記事項証明書(代理行為目録付き)」を添付してオンラインで登記申請をしたのですが、法務局から連絡があり、保佐人としての私から司法書士としての私への委任状を添付してくれとのことでした。

何故そんなことが必要なのか?と思われるかもしれませんが、実は「言われるかもなー」と予測はしていました。オンライン申請の際には電子署名を行うのですが、これが司法書士としてのものであり、私個人としてのものではないからです。個人として申請したのに司法書士の職印を押したようなイメージでしょうか(詳しい仕組みがよくわからないので正しい例えになっているか自信がありませんが…)。

なお、オンラインではなく書面で申請したならばこの指摘はなかったはずです。住所変更登記の申請においては実印を押す必要はなく、認印でよいからです。(当然印鑑証明書を添付する必要もないので、それが個人印なのか職印なのか判別のしようがないのです。)

被保佐人からの委任状は不可?

登記申請に先立ち、念のため被保佐人さんから(司法書士としての)私への委任状ももらっていたので、法務局から指摘を受けた際、この委任状でもいいかと聞いてみましたが、答えは「No」でした。

保佐人に代理権が付いていたとしても、本人(被保佐人)の権利は制限されません。つまり、被保佐人が自分で登記申請をすることはできますし、司法書士に委任することもできるはずです。また、住所変更登記の申請に保佐人の同意は不要です。(民法13条「保佐人の同意を要する行為等」に住所変更登記の申請は含まれていません。)

以上のことを法務局にも伝えたのですが、「保佐人が付いていることを把握した以上、保佐人から司法書士への委任状でなければダメ」とのことでした。釈然としませんでしたが、自分から自分に委任状を書くだけですし、それで手続きが進むなら、と思い素直に従いました。