相続による預貯金の払戻しはお早めに

遺言や遺産分割により預貯金を取得した場合、払戻し手続きに法的な期限はありませんが、なるべく早めに手続きされることをおすすめします。

Q&A

Q1.預貯金の払戻しを先延ばしにした場合、どのようなリスクが考えられますか?

A1-1.あなたが相続人以外の第三者である場合

相続人により先に払戻されてしまうリスクがあります

銀行としては遺言の存在など知りようがないので、相続人全員から払戻しを要求されたら応えざるを得ません。

相続人全員が示し合わせて遺言を無視して手続きする可能性がある他、そもそも本当に遺言の存在を知らずに手続きしてしまうことも考えられます。

A1-2.あなたが相続人の1人である場合

銀行は原則として相続人全員からの手続きでないと払戻しに応じないので、相続人の1人であるあなたの関与なしに払戻されることはないと思われるかもしれません。

ところが民法改正(令和元年7月1日施行)により、相続人の1人からでも一定の金額まで預貯金の払戻しができるようになりました
※『遺産分割前でも預貯金の払戻しができます』参照。

この制度は遺産分割前(誰が相続するかはっきりする前)の預貯金についてのものであり、遺言や遺産分割協議により誰が取得するかはっきりしている預貯金については本来利用することはできません。

ですが銀行としては遺言や遺産分割協議の存在など知りようがないので、相続人の1人から払戻しを要求されたら応じざるを得ません。

Q2.Q1のリスクを避けるためにはどのような手続きをすればよいですか?

A2-1.原則

民法上は、相続人全員から債務者(つまり銀行)に通知するか、債務者が承諾することにより対抗要件が備わることとなっています

こちらが何もしないのに銀行が承諾することはないでしょうから、実際にはこちらから「私が預貯金を相続しました」と通知することになります。

これにより、銀行は他の相続人に払戻すことができなくなります。もし他の相続人に払戻されても、そんな事情に関わらず「自分に全額払戻せ」と言うことができます。これが対抗要件を備えるという意味です。

なお、銀行以外の第三者に対抗するためには、通知(または承諾)が確定日付のある証書(内容証明郵便や公正証書)によりなされる必要があります。

第三者とは、例えば他の相続人にお金を貸している人(債権者)です。この人は、預貯金のうち、お金を借りている相続人の法定相続分を差押えることができます。これを防ぐためには差押えより先に第三者対抗要件を備える必要があります。(つまり確定日付のある証書により銀行に通知しなければなりません。)

A2-2.預貯金を取得した相続人だけからの通知でよい場合

原則は上記A2-1の通り「相続人全員」から通知をする必要がありますが、遺言の内容に不満を持っている相続人がいたり、相続人間が不仲であったりと、実際には全員の協力を得ることが難しい場合があります。

そこで、以下の場合には、預貯金を相続した人が単独で通知することができます

  • 「相続させる」遺言により預貯金を取得した場合
  • 遺産分割により預貯金を取得した場合

この通知は「遺言の内容(または遺産分割の内容)を明らかにして」行う必要があります。実際には、遺言書や遺産分割協議書の写しを添付して通知することが多いでしょう。

なお、遺贈の場合にはこの特例は適用されません。遺言書に預貯金を「遺贈する」と書かれている場合は、原則通り相続人全員から通知する必要があります。(類推適用により単独での通知が認められるとする見解もあります。)

A2-3.遺言執行者がいる場合

対抗要件を備えさせることは、遺言執行者の権限です。

「相続させる」遺言がある場合は、その遺言により預貯金を取得した相続人に代わって遺言執行者が単独で銀行に通知をすることができます

また、遺贈の場合であっても、遺言執行者は相続人全員に代わって通知をすることができます

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