公正証書作成において司法書士を間に入れるメリットは?

遺言や任意後見契約を公正証書で作成する場合、直接公証役場へ相談しに行くこともできます。わざわざ余分な費用を払ってまで司法書士を間に入れるメリットは何なのか?以下、ご一読の上ご判断いただければと思います。

司法書士を間に入れるメリット

1.手間と時間が掛からない

公証役場で相談するには予約が必要です。法律に詳しくない一般の方が公正証書を作成するには、作成前や作成過程で何度か相談する必要もあるかもしれません。

公証役場も公証人も数が少なく(※)、近所にないかもしれませんし、予約が取りづらいので、作成までに時間がかかってしまいます。

※公証役場は全国に約300箇所、公証人は約500名。なお、神奈川県は全域で15箇所、28名(執筆時点)

司法書士が間に入る場合は、公証役場とのやり取りは司法書士が行いますし、公証役場へ行く必要があるのは最終的な公正証書作成の時だけです。作成過程の相談にも柔軟に対応しますので、公証役場と直接やり取りするよりも手間や時間が掛かりません。

2.総合的なアドバイスが期待できる

司法書士は、お客様の事情や希望を聞いて様々な選択肢をご提案できます。

例えば、公証役場へ行って「遺言書を作成したい」と相談したときに、「あなたの場合は任意後見契約書や死後事務委任契約書も作成したほうがいいですよ」といったアドバイスはしてくれません。

それが余計なお世話であるならば直接公証役場へ行くのもよいですが、自分で考えていることが自分の問題への最適な解決策とは限りません

また、遺言等の内容についても「もっとこうしたほうがいいですよ」といったアドバイスは期待できません。(公証人によるかもしれませんが。)

夫婦で直接公証役場へ行って作成した、予備的遺言の記載のない遺言公正証書を見たことがあります。夫婦がそれぞれ相手に全財産を相続させる内容でしたが、相手が先に亡くなっていた場合にどうするかの記載がなかったのです。夫婦は必ずどちらかが先に亡くなります(あるいは事故等で同時に亡くなることもあります)。公正証書作成の際にその程度のこともアドバイスしてくれないのかと驚きました(繰り返しになりますが、この辺りの加減は公証人によるのかもしれません。)。結局、作り直すことになり、余計な費用が掛かることとなってしまいました。

3.公証人と司法書士の相互チェックになる

司法書士が間に入る場合、お客様からヒアリングした内容を整理して公証人に伝え、公証人が公正証書の文案を作成します。(複雑な内容のときはまず司法書士が文案を作成して公証人へ提示することも多いです。)

公証人がこちらの提示した内容を修正することもありますし、作成された文案をこちらが指摘して修正してもらうこともあります。

司法書士と公証人の相互チェックにより、質の高い文書になることが期待できます

4.公証人にも当たりはずれがある

公証人にも色んな人がいますので、当たりはずれがあります。人間なので合う合わないもあるでしょう。

実際、「十数万円も公証人手数料取るのによくこんな誤字だらけの文案を平気で送ってくるな」という公証人もいますし、稀ではありますが態度が高圧的で人格的に問題がある人もいます。

他の公証役場に変えるのも手ですが、上記1でも記載した通り数が少なく、遠方になってしまうので不便です。

司法書士を間に入れていただければ公証役場とのやり取りを直接行う必要はありません。もちろん当たりはずれがあるのは司法書士も同様ですが、司法書士は全国に22,000人以上(執筆時点)おり選択の幅が広いので、ぜひ自分に合う司法書士を探していただければと思います。

なお、公証人には裁判所OBや法務省OBでご高齢の方が多く、公証人の定年は70歳なので、せっかくいい公証人を見つけても数年で引退されてしまいます。

5.遺言執行者、任意後見受任者を依頼できる

身寄りのない場合や、親族はいるが遠方在住で頼れない場合などは、遺言執行者任意後見受任者を司法書士に依頼することができます。(公証人には依頼できません。)

なお、遺言公正証書作成の際には証人が2人必要となりますが、こちらは依頼すれば公証役場のほうで用意してもらうこともできます。(もちろん司法書士も証人になれます。)

6.他士業とのネットワーク

司法書士は他士業とのネットワークを持っている場合が多いので、必要に応じて他士業の力を借りることができます。(公証人が特定の士業を紹介してくれることはありません。)

特に協力してもらうことが多いのは税理士さんです

公証人は元裁判官や元検察官などが多く法律には詳しいのですが、税務についてはそこまでではありません。

税務面での心配があるときは、税理士さんにチェックしてもらうのが一番です。

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