Q&A
Q1.財産管理等委任契約とは何ですか?
A1.判断能力には問題がないものの、体が不自由等の理由から、他人に財産管理等を任せる契約です。
任意代理契約と呼ばれることもあります。
Q2.後見とは何が違いますか?
A2.成年後見・保佐・補助を開始するには、判断能力の低下が条件となります。
任意後見契約も締結した時点でスタートするとは限らず、判断能力の低下が条件となります。
財産管理等委任契約は、判断能力の低下がなくても開始できる点が特徴です。
Q3.契約相手は自由に選べますか?
A3.自由に選べます。
親族と契約することもできますし、専門職(司法書士や弁護士等)と契約することもできます。
Q4.財産の一部のみを管理してもらうことはできますか?
A4.できます。
むしろ管理対象を限定することが一般的です。例えば、特定の銀行口座にある程度の金額だけ預金し、その管理だけを任せるといった契約内容にします。
本人の判断能力には問題がないので、大きな財産の処分が必要となった場合には、その時に改めて委任契約を締結して代理権を付与すればよいですし、そうすべきです。
一方で、成年後見の場合は、全財産を管理します。任意後見の場合は契約で限定することもできますが、全財産を管理対象とするのが一般的です。本人の判断能力が失われてしまうと、財産が塩漬けになってしまうからです。
Q5.身上保護の代理を任せることはできますか?
A5.できます。
財産管理だけでなく、入退院の手続きや介護サービス契約の締結等の身上保護業務についての代理権を与えることもできます。
Q6.監督人は付きますか?
A6.任意後見がスタートすると任意後見監督人が必ず選任されますが、財産管理等委任契約にはそのような決まりはありません。契約で監督人を置くことはできますが、家庭裁判所が選任することはありません。
監督人への報酬が不要という点はメリットですが、第三者のチェックがないという点はデメリットです。
信頼できる相手と契約することが最重要ですが、全財産ではなく必要最小限の財産のみ管理を任せることで、万が一横領等が行われた場合の被害を低減することはできます。(Q4参照)
Q7.契約書は公正証書にする必要がありますか?
A7.公正証書にしなければならないという決まりはありません。
ただし、財産管理等委任契約は、成年後見制度や任意後見契約よりも更に世の中の認知度が低いので、きちんと公正証書にしておいたほうが、契約締結後の諸々の財産管理手続き等がスムーズに進む可能性が高くなります。
金融機関によっては公正証書にしていてもダメ(本人以外の預金の引き出しは認めない)という所もありますので、契約締結前に確認しておく必要があります。金融機関ごとにルールは様々で、最初の一回だけは本人の同行が必要であったり、一定以上の金額の取引には本人の意思確認が必要としている所もあります。そもそもルールが明確に定められておらず支店ごとに対応が違うこともあります。場合によっては解約し、理解のある金融機関に預金を移すことも検討します。
Q8.銀行の代理人カードがあれば十分ではないですか?
A8.多くの金融機関では、本人以外の親族等が使用できる「代理人カード」(家族カード)を発行してくれます。
ある程度の現預金の管理を任せたいだけであれば、わざわざ財産管理等委任契約を結ばなくても代理人カードを発行してもらえば十分、というケースもあるかと思います。
ただし、ほとんどの金融機関では同一生計であること、同居の親族であることといった条件を付けていますので、依頼したい人が条件に当てはまらないということもあります。
また、預金口座の管理だけでなく身上保護業務(Q5参照)も任せたい場合には財産管理等委任契約が必要となることもあります。
Q9.家族信託とは何が違いますか?
A9.どちらも財産管理を他の人に任せる契約という点では類似していますが、以下の点が違います。
- 家族信託は財産管理のみで身上保護には対応できない。(Q5参照)
- 専門職(司法書士や弁護士等)は財産管理等委任契約の受任者にはなれるが、家族信託の受託者にはなれない。(Q3参照)
- 本人が死亡すると財産管理等委任契約は終了し相続財産となるが、家族信託は終了させずに次の受益者に受益権を発生させたり、終了させて相続人以外の人に財産を帰属させることができる。
また、不動産については、財産管理等委任契約の場合は本人名義のままですが、家族信託の場合は受託者に名義を変更した上で信託の登記がなされます。
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