各相続人の相続割合は民法で決まっていますが、これに構わずに遺言により相続割合を指定することができます。
前者を法定相続分、後者を指定相続分といいます。
では負債(借金など)についても相続割合を指定できるのか?という問題があります。
答えは、「できるけど、債権者はそれを無視して法定相続分に基づいて権利を行使できる」です。
Q&A
Q1.具体的に説明してください。
A1.600万円の借金があり、相続人はABCの3人、法定相続分は1/3ずつとします。財産をABCに4:1:1の割合で相続させるという遺言があった場合、借金の負担額はA400万円、B100万円、C100万円となります。
しかし債権者(お金を貸している人)からすると遺言なんて知ったことではありません。知っていたとしてもそれに従う理由もありません。なので、法定相続分に基づきABCに各200万円を請求することができます。
なお、相続により債権が分割されてしまうことは仕方がないので、債権者は相続人の1人に600万円全額を請求することはできません。
Q2.債権者は指定相続分に基づく請求をすることはできないのですか?
A2.債権者が承認すればできます。
承認をした後は、法定相続分に基づく請求はできなくなります。
Q3.債権者は、法定相続分に基づく請求をした後に、指定相続分に基づく請求をすることはできますか?
A3.できます。
Q1の例で言うと、Bに200万円(法定相続分)請求して取り立てた後に、指定相続分を承認してAに400万円(指定相続分)請求することができます。
この場合、Bから取り立てた200万円のうち、100万円(指定相続分を超える額)を返還する必要はありません。
Q4.債権者が法定相続分に基づく請求しかしないと明言した後に、指定相続分に基づく請求をすることはできますか?
A4.できません。
一度明言した以上は法定相続分に基づく請求しかできなくなります。
Q5.指定相続分を超える額を返済した相続人は、他の相続人に超過額を請求することはできますか?
A5.できます。これを求償権といいます。
Q3の例で言うと、Bは指定相続分を超えて返済した100万円について、AやCに求償することができます。
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