家族信託における信託口口座とは?

受託者の義務のひとつに分別管理義務があります。

金銭・預貯金については金融機関で信託口口座を開設して管理することが望ましいです。

※家族信託(民事信託)の概要については、当事務所のWebサイトをご参照ください。

Q&A

Q1.委託者名義の預金を信託することはできますか?

A1.預金には譲渡禁止特約が付いているので、預金債権を信託財産として受託者に移転することは不適切です。

預金を解約して払戻しを受け、その金銭を信託口口座に預け入れるべきです。

Q2.信託口口座とは?

A2.受託者の固有財産と信託財産を分別管理するため、受託者が信託財産に属する金銭を預け入れる預貯金口座です。

信託事務に係る出金(例:受益者への給付)も入金(例:賃料収入)も、信託口口座で行うこととなります。

口座名義は以下の例のように様々ですが、どのようにするかは各金融機関の判断によることとなります。

  • 委託者〇〇受託者△△信託口
  • 受託者△△信託口
  • 受益者〇〇受託者△△信託口

Q3.どこの金融機関でも開設できますか?

A3.ごく一部の金融機関に限られているのが現状です。(執筆時点)

開設できる場合でも、信託契約書は公正証書で作成すること、信託財産の額が一定以上であること等、金融機関ごとに独自の条件を定めています。

信託口口座の開設については専門職(司法書士、弁護士等)を経由しての依頼しか受け付けないという金融機関もあります。

家族信託を契約する前に、契約書の案を金融機関にチェックしてもらい、信託口口座を開設できるか確認しておく必要があります。

Q4.受託者名義の口座を新規開設して利用すればよいのではないですか?

A4.信託口口座ではなく受託者名義の口座を利用する場合、以下のようなリスクがあります。

  • 受託者が死亡した場合に口座凍結されてしまい、新受託者が利用できない
  • 受託者が死亡した場合に、受託者の相続人によって払戻しがなされてしまう
  • 受託者の債権者によって口座が差押えられてしまう
  • 受託者が破産した場合に、破産財団に組み込まれてしまう

また、信託内借入(※)をする場合は、融資を受ける金融機関での信託口口座の開設が必須となります。
※例えば、信託財産である賃貸アパートの増改築のためにアパートローンを組む場合

Q5.信託口口座であればQ4のリスクを完全に回避できますか?

A5.完全に回避できるとは限りません。信託口口座については金融機関の間で統一的な取扱い基準が確立していないのが現状です。

例えば、受託者が死亡して新受託者が就任した場合であっても、事務・システム上の理由により、既存の信託口口座を継続利用するのではなく、一旦解約・払戻しをした上で新たな口座開設をするよう求められる場合もあり得えます。

最悪、口座名義に信託口と付いているだけで、受託者個人の口座と同様に扱われる可能性もあります。どのような取扱いがなされるのか、口座開設時に金融機関によく確認する必要があります。

仮に受託者の相続人に払戻されたり、受託者の債権者に差押えられたとしても、訴訟等でその効力を争う余地はあります。ですが余計な手間と時間を要しますし、その間は信託口口座が使えないことにより信託事務に支障をきたすことにもなります。

Q6.預金種別は何にすべきですか?

A6.預金種別には普通預金、決済性預金等があり、細かい種別は金融機関によっても異なりますが、預金保険制度(いわゆるペイオフ)により全額保護される(1000万円の保護上限がない)種別の口座にすべきと考えます。

Q7.証券会社にも信託口口座を開設することはできますか?

A7.決して多くはありませんが、開設できる証券会社も増えてきています。(執筆時点)

ただし、対象商品が限定されていたり、信託契約内容も限定されていたり(受益者連続型はダメ等)と、厳しい条件が付くことが多いようです。

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