家族信託において信託できない財産

信託銀行や信託会社に信託できる財産は、ほとんどの場合金銭に限られています。

一方、家族信託では金銭以外の財産(不動産等)も信託できますが、例外もあります

※家族信託(民事信託)の概要については、当事務所のWebサイトをご参照ください。

信託できない財産

1.預金

預金債権には譲渡禁止特約が付いているので、委託者名義の預金をそのまま信託することはできません

いったん解約して払戻しを受け、新たに信託用の口座(※)を開設して改めて預け入れる必要があります。

※『家族信託における信託口口座とは?』参照。

2.債務

債務を信託することはできませんが、受託者が委託者の債務を引き受け、それを「信託財産責任負担債務」とすることにより、実質的には債務を信託することと同様の効果を生じさせることが可能です

債務引受契約(※)は債権者を交えた契約なので、(委託者と受託者のみで交わす)信託契約とは別物です。引き受けた債務を信託契約において「信託財産責任負担債務」にすると取り決めることにより、信託財産から返済していくこととなります。

※受託者が委託者とともに連帯債務者となる併存的債務引受と、委託者の債務を免除し受託者のみが債務者となる免責的債務引受があります。いずれにせよ債権者との契約もしくは承諾が必要となるので、委託者と受託者のみで決められる問題ではありません。

なお、信託財産だけで返済し切れなくなった場合は、受託者が自らの財産で返済する義務を負うので注意が必要です。

例として、銀行からアパートローンの融資を受けている場合に、アパートを信託するとともに、ローン債務を受託者が引き受け、信託財産責任負担債務にすることが考えられます。

3.農地

不動産は基本的に信託できますが、農地は信託することができません。

農地を宅地等に転用すれば信託できますが、転用には都道府県知事等の許可が必要です

4.年金

年金受給権は信託することができません

ただし、本人(委託者)が受け取った年金を、金銭として信託することは可能です。

その場合、都度、委託者と受託者の間で追加信託をする旨の合意が必要となりますし、委託者が認知症等で意思能力を失うとそれ以降に受け取る年金は信託できなくなります。(信託契約を工夫して合意がなくても自動的に信託されるような仕組みにすることも可能かもしれませんが、年金受給権の譲渡を禁じた国民年金法等の潜脱とみなされ無効となるリスクもあると思います。)

5.土地の賃借権(地主が承諾しない場合)

地主(賃貸人)の承諾を得ずに土地の賃借権を信託すると、借地契約を解除される可能性があります

承諾を得られない場合には、裁判所に対して承諾に代わる許可を求めることができます。

ただし、承諾を得られる場合であっても承諾に代わる許可を得る場合であっても、通常は承諾料(借地権価格の10%程度)を支払う必要があります。

なお、信託後に建物を増改築する場合、借地契約において増改築が制限されているならば、また地主の承諾が必要となります。

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