不動産の登記事項証明書は誰でも取得することができます。所有者の住所や氏名が記載された情報を誰でも取得できるというのは、プライバシーの意識が高くなった現代においては違和感を覚える人も多いでしょう。
しかし、登記はそもそも「この不動産は私のものです!」と公示するものなので、誰でも見ることができる必要があるのです。
一方でDV被害者等、住所を公開されては困る事情をお持ちの方もいます。
不動産登記法改正(令和6年4月1日施行)により、一定の場合に住所を非公開にできるようになります。
Q&A
Q1.どのような場合に住所を非公開にできますか?
A1.住所が明らかにされることにより、以下のようなおそれがある場合です。
- 人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合
- 上記に準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合
具体的な内容は今後法務省令で定めることとなっていますが、以下のような対象者が想定されています。
- DV被害者
- ストーカー被害者
- 虐待を受けた児童
- 犯人からの報復のおそれがある犯罪被害者
単にプライバシーを保護したいからという理由で非公開にすることはできません。
Q2.登記名義人の住所に代わって記載される情報はありますか?
A2.今後、法務省令で具体的に定められる予定です。以下のような情報が想定されています。
- 登記名義人の親族・知人等の住所
- 委任を受けた弁護士等の事務所の住所
- 被害者支援団体等の住所
- 法務局の住所
Q3.条件に該当する場合、登記申請において住所の記載や住民票の添付が不要となるのですか?
A3.いいえ。不動産を購入したり相続したりして所有権登記名義人となる場合は、登記申請において住所の記載や住民票の添付が必要であることは変わりません。
あくまで「登記事項証明書には記載されない」ということです。
Q4.法務局で保管されている登記申請の際の書類(住民票等)を閲覧されたら住所を知られてしまうのではないですか?
A4.第三者が登記簿の附属書類を閲覧するためには、「正当な理由」が要求されます。(この点で、誰でも取得できる登記事項証明書とは異なります。)
「正当な理由」の具体的な内容は今後通達等で明確化することが予定されていますが、例えば、以下のようなケースが想定されています。
- 過去に行われた分筆の登記の際の隣地との筆界等の確認の方法等について確認しようとするケース
- 相続登記について、他の相続人がその内容に疑義があると考えるケース
- 不動産を購入しようとしている者が登記名義人から承諾を得た上で、過去の所有権の移転の経緯等について確認しようとするケース
- 登記名義人を相手とする訴訟のために必要なケース
Q5.法人も対象となりますか?
A5.いいえ。本制度により住所を非公開にできるのは個人(自然人)に限られます。
コメント